吉原マンション景観訴訟・訴訟取り下げについて
2010/4/9

7階建てマンションが計画されていた地区を含む字川平全域が本年3月12日付で都市計画法上の景観地域に指定されたことで、計画予定地では建築物の高さは7メートル以下に法的な強制力を持って制限されることとなりました。また、本年1月に事業主がマンション計画予定地の一部を歩道用地として県に売却したため、現行計画では容積率を満たせない状況にもなっていました。
原告団では、こうした状況を勘案し、事実上マンション計画が実現不可能になったことで、裁判での争点がなくなったものと判断し、全員の総意として、訴訟の取り下げを決断致しました。
訴訟取り下げという形で終結を迎える事にはなりましたが、結果的には建設計画を差し止める形となり、我々原告団としては勝訴的な取り下げであると考えています。
また、今回の訴訟は、行政訴訟法の改正を受けて、着工前の建築確認申請の段階で差し止めを求める前例のない画期的なものでしたが、事実上計画が実現不可能となり、着工前に断念をさせる結果となったことは今後の景観に関する問題提起に大きな一歩となったものと考えます。
最後に、この場をお借りして、我々の訴訟にご協力・ご支援を賜りました皆様方に心より御礼申し上げます。本当にありがとうございました。
 
吉原マンション景観訴訟・控訴審
2009/10/27

■第4回準備手続

10月26日、福岡高等裁判所那覇支部で控訴審の第4回準備手続が行なわれました。裁判官により控訴人及び被控訴人各々に対し石垣市が策定中の川平地域の景観地区決定の進捗状況についての確認がななれました。今回の準備手続では、この景観地区計画の進行状況を見守る形で合意し、来年1月20日に再度進行協議(準備手続)を行なうこととなりました。



■現地進行協議及び市役所訪問

9月25日、福岡高等裁判那覇支部の裁判官が、石垣島を訪れ現地進行協議を行いました。河邊裁判長と担当裁判官の2人が現地を視察しましたが、高裁の裁判長が現地視察をすることは異例中の異例であり、裁判所の関心が極めて高いことが推察されました。
また、河邊裁判長は「景観地区の指定は先送りか」との質問をするなど、指定の手続にも感心をよせていることをうかがわせました。
原告側も、大型クレーンでマンションの実際の高さを再現するなど裁判官にマンションの巨大さを実感してもらう為のパフォーマンスを行いました。
河邊裁判長らは現場や山原地区、吉原小学校の他、グラスボートに乗船して川平湾からの眺望も確認されました。

現地進行協議終了後、川上原告団代表と代理人の井口弁護士らが石垣市役所を訪問し、大浜市長に対し進行協議の報告を行うと共に、「(景観地区の高さを定める)都市計画決定の手続は滞りなく進めてもらいたい」と強く要望を行いました。

これに対して石垣市(慶田盛都市建設課長)からは「粛々と進め、県知事同意までとっておきたい。都市計画決定は2週間の公告・縦覧期間があるので10月に入る」との回答を得ました。








■第3回準備手続

9月8日、福岡高等裁判所那覇支部で控訴審の第3回準備手続が行われました。原告側からは、マンション建設のシミュレーション写真の提出と共に、川平地区景観地区指定の内容と進捗状況の報告を行いました。席上、被告沖縄県からは、景観地区の建造物の高さ制限等に関わる都市計画決定については事前協議における石垣市の準備遅れにより遅延となっている旨の説明がありました。また、9月末に予定されていた裁判官による現地進行協議については9月25日に実施されることとなりました。






■第2回準備手続

7月13日、福岡高等裁判所那覇支部で控訴審の第2回準備手続が行われました。原告側は高層マンション建設による日照権の侵害を盛り込んだ準備書面を提出しました。
また、川平地区の景観地区指定も石垣市により手続きが進められていることから、9月下旬に裁判官らが現地進行協議を実施し、10月26日に景観が及ぼす損害の重大性を主張する口頭弁論が開かれる運びとなりました。








■第1回公判及び準備手続


5月14日、福岡高等裁判所那覇支部で第1回口頭弁論が開かれました。
原告は、控訴理由書を提出すると共に、意見陳述を行いました。
被告沖縄県は、地裁判決を支持する答弁書を提出しました。



第1回口頭弁論の要点

原告側は「高さ25mに及ぶ建築物は周囲の地形や植生に対して大きな違和感を与え、近隣住民に圧迫感を生じさせる異様な建築物であり、川平湾の景観に決定的な打撃を与える」として、マンション建設による景観利益の侵害が大きいことを訴え、風景計画・条例を建築確認の関係法規に盛り込むことを求める控訴理由書を提出した。これに対し、被告の沖縄県は地裁判決を支持する答弁書を提出した。

→原告控訴理由書(http://ishigaki-keikan.net/riyusyo.pdf
→被告答弁書の概要(http://ishigaki-keikan.net/tobensyo.pdf
→原告団長川上博久さんの意見書(http://ishigaki-keikan.net/ikensyo.pdf


控訴審後に、裁判の争点整理などの準備手続きが行われ、原告側は今後、日照権等についても主張に加えることを検討することとした。次回の控訴審は、7月13日に再度、準備手続きが行われることとなった。
 
吉原マンション景観訴訟「なぜ上訴したか・その2」
2009/2/20

■八重山毎日新聞(平成21年2月17日)

吉原マンション景観訴訟「なぜ上訴したか・その2」      神野 豊

2月6日掲載の川上博久・原告代表に続き、原告団のひとりとして上訴についての考えを書かせて頂きます。
そもそも私が原告団の一員に加わったのは、多くの市民が賛同し、市議会で満場一致で可決された「石垣市風景づくり条例・風景計画」(以下風景条例)に大きく違反するこの高層マンションが、近隣住民の反対や市の勧告を全く無視して、建築されようとしているからでした。
そして、その危険な状況については、現在も尚何も変わっていないというのが実状なのです。このことは、那覇地裁における一審の判決文においても「建築確認処分がなされる蓋然性がある」とされています。蓋然性とは簡単に言えば確からしさという意味で、可能性が十分にあると解して良いと思います。すなわち、現在、このマンションの建築確認申請は構造計算の不備によって差し戻しとなっているものの、建築事業主は十分建築続行の意思があり、確認申請の再開の可能性は極めて高いと裁判所も判断したものと言えます。
そして、一審判決にあるように、現状のままでは、「風景条例」は建築確認審査の法令対象にはならず、事業主が市や住民の反対を押し切って、条例に反した建築物を建てることが可能なのです。
もちろん、石垣市では現在吉原エリアを含めた川平地区を景観地区に定めることで、「風景条例」を建築確認の対象法令とし、違法な建築を阻止しようとの取り組みを行っています。ただ、残念ながら、地区指定実現にはあと数ヶ月の時間がかかるものと思われます。つまり、それまでには現実的には、建築確認の再申請をはじめ事業主の建築続行の動きを法的に止める手立てはないと言えるのです。
それゆえ、私達原告団は那覇地裁に続き、福岡高裁に控訴をすることを決断しました。控訴は、条例に反した建築物を立たせないという私達の断固とした意志の表明でもあります。
私達は改めて司法の場で、「風景条例」を無視し、景観を大きく損なうこの建築行為の違法性を問いたいと考え、上訴することに致しました。
そして、上訴することで、より多くの市民の皆さんに、この事態を知って頂き、関心を持って頂きたいとも考えました。今、この高層マンションの建築を阻む最大の力は、市民ひとりひとりの意識と関心にあると思います。この島に住む、より多くの人たちが、島の自然と景観を破壊するような建物に対し反対の意思を表し、事態の推移をしっかりと注視してゆく。そのことが、景観を守る最大のパワーになると私達は信じてやみません。
以前の投稿にも書きましたが、私はやみくもに開発に反対する立場にはありません。むしろ、この島にとって開発は極めて重要なものであると考えています。但し、それは石垣島の自然や文化や環境といったものを尊重し、出来うる限り保全してゆくものでなければならない。そして、その想いを籠めて創った島のルールが「風景条例」だと思います。
「風景条例」を無視した建築行為を認めるか否か、今一度市民ひとりひとりが島の未来を見据えてしっかりと考え、この訴訟の今後を注視して頂ければと、切に願います。
(石垣市川平1216−252在住)

 
「吉原マンション景観訴訟」なぜ「上訴」したのか?
2009/2/15

■八重山毎日新聞(平成21年2月6日)


「吉原マンション景観訴訟」なぜ「上訴」したのか?
                          原告代表 川上博久

 去る1月20日、那覇地方裁判所で「吉原高層マンション建築確認差し止め訴訟」の判決が言い渡されました。一部原告は「請求棄却」、また他の原告は「請求却下」とされました。判決を法廷で受けた私・原告の一人としては、裁判長の読み上げる数行の主文は極めてあっけないものでした。しかし受け取った判決文は47ページにわたる相当量のものであり、しかも判決理由の裁判所の「判断」の部分は、12ページにおよんでおりました。
結論の判決が却下であることは、当初から十分予測していたものでした。というのも、建築確認申請人である事業主が平成20年6月以降、構造計算が不十分で差し戻されていた建築確認申請の追加書類を沖縄県へ出していない現況であるが故に、「緊急性」のないものとして「建築確認の差し止め」の訴訟要件に当たらないと裁判所に裁定されると思っていたのです。ところが判決文を読むと、私たち原告は裁判を起こす当事者に値する「原告適格」(裁判用語になってしまいますが)が認められていました。そして石垣市の「風景計画・風景づくり条例」が依拠している「景観法」の主目的である「景観利益」を原告全員に認めた全国的にも画期的な判決でした。門前払いの可能性もあっただけに、裁判所の判断には驚きました。その判断を確認した上で、私たちは福岡高等裁判所に控訴することにしました。原告は、一審と同じ6名です。
 「吉原高層マンション建築確認差し止め訴訟」とは、県道79号線を吉原集落から山原に向かって600メートル程の道路沿いに建設が予定されている、7階建て高さ24.85メートルの34世帯の賃貸マンションに対する裁判です。今を去る3年程前に吉原自治公民館主催で、事業主と建築士・施工業者、沖縄県の建設課・道路管理課と石垣市の都市建設課の行政の方々、そして山原を含む地域住民が参加して「建設説明会」が開かれました。その場で、歩道も設置されていない急カーブの道路脇に地域の生活の安全と風景を無視して7階建ての建設物を作るとは身勝手なものである、と参加者全員の建設反対の意思表示がされました。その後、事業主及び建築士に計画を変更するように再三申し入れました。
 建設予定地は、坂道の急カーブでフタのない側溝が脇にあり児童の通学路としても極めて危険な場所でした。建設説明会以後、沖縄県は慌ててその場所の側溝にフタを被せガードレールを敷設しました。そして平成20年6月1日に石垣市の「風景計画・風景づくり条例」が施行されました。風景区分では建設予定地の場所は「サンゴの海浜から100メートル以内」にあり、建物は7メートル以下のものしか建てられません。ところがあろうことか事業主は、当初の計画通り24.85メートルの建物の建築確認申請を沖縄県に提出したではありませんか。地域住民が反対し事業主に変更を求めても聞く耳を持たず、石垣市の風景ルールさえも守る気がない、ということでしょうか。
そこで相談した弁護士さんの助言がありました。「行政事件訴訟法」の変更がされ、県へ申請されている「建築確認の差し止め」の訴訟ができると言うことでした。私たちが知る限りでも、日本各地で高層マンション等建設での地域住民とのトラブルをしばしば耳にします。しかし住民が工事を止める要求をして裁判を起こしても建設はどんどん進み、裁判を起こしたものの結局建築物は完成してしまう例を読み聞きします。今回の裁判は工事着工前、建物の設計段階での「建築確認」の差し止めを請求したものです。建築確認をするのは県の仕事ですから、地域住民の原告は沖縄県に差し止めを求めることになったわけです。これが全国ではじめてだと云われる行政訴訟の一つの意味です。
私たちの裁判での主張は、建築確認をする際に参照する「建築基準関係規定」の中に、「「景観法」に基づく「風景計画・条例」を新たに加えよ」、と云うものです。石垣市議会の満場一致で採決された「風景条例」の実効性を司法に問うた訳です。そこに大浜長照市長の証人申請を裁判所に申し出た意味がありました。しかし今回は、市長の証言は原告の主張と変わらないものであろうとされ、証人尋問は認められませんでした。
 短期で結審されると思われていた裁判は一昨年の9月に始まり、6回の口頭弁論と、二人の裁判官と書記官が来島し川平・吉原を半日かけ現場検証をする「現地進行協議」が行われました。進行協議では風光明媚な地の特性をある程度示すことが出来たかと思っております。しかし翌日に石垣支所で予定されていた建築確認申請人・事業主の証人尋問は開かれませんでした。裁判所は事業主を呼び出しましたが、当人は体調不良を理由に診断書さえ提出することなく出廷を拒否しました。それが今回の判決で、申請人はまだ建築の意志がある、との裁判所の判断につながったのだと思われます。建築の意志がなければ、それを証言すればよかったのです。
 今回の判決では、個々人の景観利益を認めながらも一方景観利益の具体的にどの程度侵害されるのかが明らかでないが故に、重大な損害が生じるおそれがあると認めるのは困難であるとされました。それは、当然と云えば当然でしょう。この裁判は、何故ならば「建設物」の図面はおろか、測量図を参照にしたものでなく、あくまでも景観法に基づく「建築確認」の差し止めに焦点があったからです。裁判所は石垣市の「風景づくり条例」について、「届出、勧告」の緩やかな規制であり、建築確認の審査対象とするには、「景観地区」が必要であるとしています。私はこの判決を市と地域住民が進めている川平地区の「景観地区指定」を早く進めなさい、と云うメッセージと受け止めました。
これらのことを踏まえて私個人の利害でなく、小さく限られた島のこの豊かな、且つぜい弱な美しい自然と環境を次の世代に守り伝えるためにも、あらためて「風景条例」即ち「景観法」の実効性を司法に問うてみたいと思っております。それは、またしばらく時間のかかる訴訟になると思われ、一市民としては不安でありますが、以上のことを皆さんにご理解していただき、石垣島のまれにみる美しい自然環境をこれからも守って行きたいとおもっています。
                 (石垣市川平1218−106在住)


 
判決及び今後の方針
2009/2/13

1月20日、那覇地方裁判所にて本件の判決が言い渡されました(http://www.y-mainichi.co.jp/news/12840/)。
判決は石垣市風景計画・風景づくり条例が、建築基準確認規定に定められていないと指摘。さらに、石垣市がマンション建設予定地の地区について、建築物の高さなどを制限する景観法の景観地区に定めていないことを理由に、市風景計画・風景づくり条例は建築基準法の建築確認審査の対象にならないとし、その上で原告の建築確認差し止めの訴えに対しては、「マンション建設により景観利益が一定程度制限される可能性は認められるものの、具体的にどの程度侵害されるかが明らかでない」として、請求を棄却(一部原告は却下)しました。


■判決についての見解

私達の請求が棄却されたことは、極めて遺憾であり残念であると言わざるを得ませんが、那覇地裁の判決については、ある程度評価の出来るものであったと考えています。
具体的には、原告の景観利益を幅広く認めていることについては、非常に画期的な判決であったと考えています。
また、判決文で今後建築確認申請がなされる蓋然性があるとしている点も、本訴訟の緊急性を認めたものと評価できるものと思います。
更に、判決文で市風景計画・風景づくり条例を建築確認審査対象とするには、景観地区指定が必要としたことは、現在市と地域住民が進めている川平地区の景観地区指定を早く進めるべきとの裁判所からのメッセージとして、私達は受け止めました。

■上訴について
 
今回の那覇地方裁判所の判決を受けて、私達原告団6名は全員一致で本件を福岡高等裁判所に控訴することに致しました。
上訴は、市風景計画・風景づくり条例に反した建物を立たせてはいけないという私達の断固とした意志の表明です。
私たちは改めて司法の場で、石垣島の景観を大きく損なうこの高層マンションの違法性を問い質してゆきたい、と考えております。より多くのみなさんがこの訴訟の今後に注目を頂き、ご支援・ご協力を頂けることをお願い致します。

Olive Diary DX Ver1.0